発達障害とは?
種類・症状・療育支援の重要性
発達障害とは、生まれつきの脳機能における「発達の偏り」に起因する障害です。得意・不得意の特性と、その人を取り巻く環境や人との関わりのミスマッチから、社会生活において様々な困難が生じます。
発達障害は外見からは分かりにくく、その症状や困りごとは人それぞれです。
そのため、発達障害の特性を「自分勝手」「わがまま」「困った子」などと捉えられ、「怠けている」「親の育て方が悪い」などと批判されることも少なくありません。
しかし、特性ゆえの “困難や生きにくさ” は、環境を整え、特性に合った療育・支援の機会を用意することで、軽減されると言われています。
お子さまと周囲の人がその子の個性・能力・希望など理解した上で、その子に合ったサポートをしていくことが大切です。
Ⅰ 発達障害の種類と
グレーゾーン
( 1 ) 発達障害の3つの種類
① 自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などが統合されてできた診断名です。英名のAutism Spectrum Disorderの頭文字をとってASDと略されることもあります。主な特徴として
① 社会的コミュニケーションや対人関係の困難さ
② 限定された行動、興味、反復行動
② 限定された行動、興味、反復行動
などがあり、感覚に関する過敏性や鈍感性を伴うこともあります。
従来、世界保健機関(WHO)の定めた国際疾病分類(ICD)やアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)では、広汎性発達障害というカテゴリーの中で自閉症、アスペルガー症候群という診断が位置づけられていました。その後、2013年に刊行された「DSM-5」では自閉症という障害名が廃止され、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の障害名のもとに統合されました。
② ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHDは、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害とも呼ばれ、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)といった症状が見られる障害です。ADHDは、これらの要素の現れ方の傾向は、「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」というように人によって異なります。以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2013年に刊行された「DSM-5」で、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」に変更されました。ADHD(注意欠如・多動性障害)の3つ種類と症状・特徴について
●不注意優勢に存在
「不注意」の特徴が強く現れ、「多動・衝動」の特徴があまり強くないタイプです。授業中に集中し続けることが難しい、忘れ物が多い、外からの刺激などですぐに気がそれてしまうなどの特徴があります。一方で、自分の好きなことについて考えたり取り組んだりしていると、話しかけられても気づかず、周囲の人に「無視をした」と誤解されることもあります。
●多動・衝動優勢に存在
「多動性及び衝動性」の特徴が強く現れ、「不注意」の特徴があまり強くないタイプです。動いていないと気分的に落ち着かないだけでなく、無意識のうちに身体が動いてしまう、感情や欲求のコントロールが苦手などの特徴があります。授業中でも立ち歩く、指名されていないのに答えてしまう、などの特徴から、集団生活で落ち着きのなさについて指摘されることも多いです。
●混合して存在
「不注意」と「多動性および衝動性」の特徴をともに満たしているタイプです。
③ 学習障害(LD)
学習障害(Learning Disabilities:LD)とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のことです。困難さを感じる特徴によってディスレクシア(読字障害)、ディスグラフィア(書字障害)、ディスカリキュリア(算数障害)と呼ばれることもあります。また、2013年に刊行された「DSM-5 」では「限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder)」という名称になっています。学習障害(LD)の特徴について
学習障害は知的な発達に遅れはないにも関わらず、読みや書き、計算などある特定の課題の習得だけが、他に比べてうまくいかない状態を指しています。目安としては、学校での学習到達度に遅れが1~2学年相当あるのが一般的です。 読字障害は、文字が読めないのではなく、文章を読むのが極端に遅く、読み間違えることがよくあります。書字障害は文字を書いたり文章を綴ったりするのが難しいです。読字障害があると書字障害も伴いやすいです。算数障害は計算や推論することが難しいです。
学習障害は、本格的な学習に入る小学生頃まで判断が難しい障害です。特定の分野でできないことを除けば発達の遅れは見られないため、「がんばればできる」「努力が足りない」「勉強不足」と見過ごされることが多いです。支援の必要性が認知されにくく、結果的に子どもの自信の低下につながりやすいので、注意が必要です。
( 2 ) 発達障害に併存する障害や症状
自閉症スペクトラム障害とADHDに知的障害を併存している人もいます。光や音、味や匂い、触り心地などに敏感な感覚過敏や、反対に痛みや五感への刺激の反応が鈍い感覚鈍麻のある人も多いです。他にも言語発達遅滞(言葉の遅れ)や発達性協調運動障害、てんかん、チックなどの併存が見られる人もいます。
( 3 ) 発達障害のグレーゾーン
グレーゾーンとは発達障害の特性があるが、診断基準は満たさない状態を指す通称です。発達障害かどうかは数値のような明確な基準がないので、はっきりと見極めづらい状態にある人もいるのです。
診断基準を満たす場合と比べ困難は少ないと思われがちですが、理解や支援が得られにくいなど、グレーゾーンならではの悩みもあります。そのため、診断がなくても受けられる支援もあります。
Ⅱ 発達障害のサイン・症状
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害の症状は程度や年齢などによって非常に多様です。主な特徴としては1~2歳の頃から「目が合わない」「他の子に関心がない」「言葉が遅い」などで気づかれることが多いです。その後成長に伴って「一人遊びが多い」「指さしをしない」「人のまねをしない」「名前を呼んでも振り向かない」「表情が乏しい」「落ち着きがない」「かんしゃくが強い」などもよく見られるようになってきます。感覚の鈍さや敏感さなどがある場合もあるので「大きな音が怖い」「プールやお風呂に入ることが苦手」「人がたくさんいるところを嫌う」などの傾向が見られることもあります。また学齢期以降になると主に学校内での様子から「友だちができにくい」「関わりがしばしば一方的で、友達が嫌がっても話し続けてしまう」など、感情を共有したり、対人的な相互関係を築くことが難しい傾向が見られます。
成人期では就労や仕事関係でつまづくこともあり「仕事の全体像を捉えて優先順位をつけることが苦手」「現場のニーズに合わせて臨機応変に対応することが難しい」という傾向が見られます。また学齢期以上に対人関係もより複雑化してくるので、コミュニケーションにすれ違いが生じたり、社会的なマナーが理解できずにトラブルになったりすることがあります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
幼児期から「落ち着きがない」「かんしゃくが強い」「非常に活発である」など見られますが、ADHDでないお子さまとの違いが見分けにくいところがあります。そのため就学してから「授業に集中できない」「忘れ物が多い」「時間の管理が苦手」「すぐに気が散ってしまう」などの特徴からADHDではないかと疑われることが多いです。成人期では就労や仕事関係の場面で「ケアレスミスが多い」「〆切や約束ごとが守れない」「物事を順序だてて取り組むことが苦手」「長時間机に座って事務作業をおこなうことができない」などの傾向が見られることがあります。また生活の場面でも「片付けができない」「ゴミを溜めっぱなしにしてしまう」「途中で作業を中断しているものが多くある」などの特徴が見られます。